橋本ビル前
秋立ちぬ(1960年 東宝 )
『大瀧詠一の「映画カラオケ」のすすめ。(月刊東京人2009年11月号)』には
・竹田ビルを左に曲がった先に、秀男がお世話になる八百屋(茂子の実家)がある。
とある。では、新富橋を渡った次のシーンを見てみる。
茂子と秀男がこちらに向かって歩いてくる。P01
「イミズ」の看板のある電柱を左に曲がる茂子と秀男。P02
茂子と秀男がこちらに歩いてきた道路には歩道があり、車道との境にはパーキングメーターが設置されているのがわかる。ではこの角の建物が「竹田ビル」なのだろうか?
在りし日の竹田ビル。P03
P02と比べるとその違いがお分かりと思う。P02は商店の店先のように見える。建物角の太い柱も見えない。では現在と比べてみる。
現在の新富町交差点。P04
右角の小さなお社の場所に竹田ビルが建っていた。
道路は新富橋に向かって若干登り坂になっているが、P02の画像ではフラットである。
実は前述『大瀧詠一の「映画カラオケ」のすすめ。(月刊東京人2009年11月号)』で次に映画では竹田ビルを曲がるシーンは映っていない。という件があったのだ。
じゃ一体ここはどこなんだろうか???
作品を見なおしてみると奥には左右に車がバンバン行き交ってるのが確認できた。また画像でもお分かりのように、4~5階建てのビルはあるが、木造建築もあり、銀座中央通りのような繁華街ではなさそうだ。この辺りで交通量が多く繁華街っぽくない所となると、昭和通りか新大橋通りが思いつく。新大橋通りはちょっとロケ範囲から外れていそうな気がしたので、昭和通りに絞って探してみた。
探し方としては、火保図、住宅地図、空撮写真、ストリートビューを使って毎度のローラー作戦。その結果銀座東三丁目交差点から1本入った所と特定した。これについては『ぼくの近代建築コレクション』の管理人様からもお墨付き(?)をいただいた。特定の経緯については正直自慢げに公開したいところだが、時間の関係上涙をのんで割愛することとする。
では最後に問題の場所を紹介する。
橋本ビル。P05
茂子と秀男が曲がった商店はラーメン屋になっている。
毎度のことながら10枚ほど撮影したが、左右のバランスがどれもうまく撮れておらず、Flash化を断念した・・・・・
〔解説〕
当時から小さな建物で、昭和30年の火保図には「広島乾物」、昭和37年の住宅地図には「乾物・カブキ食品」、昭和43年の住宅地図は解読不明、昭和54年の住宅地図では「橋本ビル」となっている。
何故わざわざこの場所に飛んだんだろう?竹田ビルを曲がるのが一番自然だと思うのだが・・・・・
『大瀧詠一の「映画カラオケ」のすすめ。(月刊東京人2009年11月号)』を読むと、その辺りの謎が解けてくる。大瀧氏はこの中で、『秋立ちぬ』と『銀座化粧』はシンメトリーであるとしている。『銀座化粧』では竹田ビルを正面から映すシーンが多々あるが、その反面『秋立ちぬ』では1枚しかない。それも画像の隅にチラッと映っている程度だ。残りはすべて裏から、新富橋上からのシーンになる。成瀬監督は『銀座化粧』と全く同シーンはあえて取らなかったようだ。
さて、この橋本ビルのシーンだが前述のように『大瀧詠一の「映画カラオケ」のすすめ。(月刊東京人2009年11月号)』には載っていない。もしかしたら大瀧氏も特定できていなかったのかもしれない。そうなると、私が、世界で初めて???
〔このシーンの出演者〕
・乙羽信子 ・大沢健三郎
〔ロケ地情報〕
名称:橋本ビル
住所:東京都中央区銀座3-11-10
交通:東京メトロ、都営地下鉄東銀座駅下車A7出口より徒歩1分
現地撮影:2015.07.29